会期|2016年7月22日(金)
内覧会|16:00 – 18:00
レセプションパーティー|20:15 –
会場|ホテルアンテルーム京都
住所|〒601-8044 京都府京都市南区東九条明田町7番
URL|http://hotel-anteroom.com/gallery/1415

主催|ホテル アンテルーム 京都 | GALLERY9.5、協力|株式会社山田写真製版所、会場構成|村山圭、企画構成|佐々木新/清野琴絵
バルーン|デイジーバルーン、フォトグラファー|皆川聡、ヘアメイク|富沢ノボル、スタイリスト|相澤樹、モデル|小林由佳、プロダクションサポート|澁谷摩耶

現代に生きる私たちが「問題なき問題」に直面していること。これが、本展におけるテーマの出発点となりました。現代、特に先進国に生きる人の多くは、自由や平等、人権を確保され、生命体として満たされた状態にあります。藝術を生み出すアーティストにとって、このような生命体としての苦悩がなく、身を以て「問題」を感じることが少ないという状況は、換言すれば、「問題なき問題」を抱える、ということになります。一見、飽和しきった、出口なき問題に見えるこのテーマも、ゆっくり息を潜めて思索していくと、そこには狭められた個という孤独のかたちがぽっかり浮かび上がってきます。かつて孤独を含むさまざまな苦悩や悲しみは、大きな共同体に根付いた物語という共感装置によって昇華されてきましたが、個を重視する現代に至り、私たちはそのコミュニティを失いつつあります。もちろん、個として生きなければならなくなった人間は多くのものを得ましたが、同時に、昇華しきれない孤独を義務付けられたのです。もう、私たちは大きな共同体で自分の延長として他者を感じることはできないのでしょうか。始まりはひとつであっても、一度分散したら戻ることがないビックバン以降の宇宙の膨張、そして、そこに散らばってしまった粒子のように、人は孤立し、分散していく運命にあるのでしょうか。
古き文化が守られ、失われた共同体がまだ残っている京都という地は、『MOBILE(モビール)』の作用がなされている数少ない都市だと言えるかもしれません。この『MOBILE』とは、バランスを保ちながら個体を繋げるストラクチャのことで、京都では、人々が個として分散せずに、コミュニティを形成しているように思えます。それを現代まで持続可能にしてきたのは、個の力がより巨大な都市という器にかしづき、都市もまた個に還元してきたからでしょう。失われた共同体の存在に気づき、自らが何をすべきかを考える、本展が、そのような機会となれば嬉しく思います。

©DAISY BALLOON